提携米研究会
公開学習会「除草剤グリホサートをめぐる日本と世界の動向」
日時 2019年3月10日(日)13:30~15:30
講師:印鑰智哉さん
2018年12月25日、年末も押し迫った日に、日本政府はグリホサートの残留許容量を大幅に緩和しました。
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改正前ppm |
改正後 ppm |
変化 |
小麦 |
5.0 |
30 |
6倍 |
ライ麦 |
0.2 |
30 |
150倍 |
とうもろこし |
1.0 |
5 |
5倍 |
大豆 |
20 |
20 |
- |
てんさい |
0.2 |
15 |
75倍 |
ひまわりの種子 |
0.1 |
40 |
400倍 |
綿実 |
10 |
40 |
4倍 |
このことが何を意味するのか、特に私が心配だったのは、学校給食に出されるパンやパスタなどの小麦製品でした。
小麦の残留許容量が5ppmから30ppmへ6倍も引き上げられたことは、グリホサートを主要成分とする除草剤ラウンドアップの収穫前散布が原因ではないか、とのこと。アメリカやカナダなどでは、小麦の収穫を容易にするため、収穫の直前にラウンドアップを散布しているそうです。
私の子どもが通う小学校の給食で使用している小麦は、100%アメリカかカナダからの輸入品でした。
日本政府は、このような海外からの輸入を今後も続けるために、今回の大幅緩和に踏み切ったと考えられます。
ラウンドアップによる健康被害については、アメリカで訴訟が数多く起こされており、ついに2018年8月に2億9000万ドル(320億円)の支払いを命じる評決が出されました。陪審員は全員一致で、モンサント(現バイエル)の行動には「悪意」があり、ラウンドアップとその業務用製品が、原告の末期ガンの「実質的」原因だったと結論付けました。
また、フランスでは、2019年1月にラウンドアップとその関連商品は個人向け販売が禁止されました。これは、リヨン行政裁判所が、規制当局は安全上の懸念を考慮せずにラウンドアップの販売許可を出したという判決を受けたものです。
このような流れに逆行するように、日本政府は年末のどさくさに紛れるように、大幅緩和に踏み切ったのです。印鑰さんは、今後小麦製品がグリホサート摂取の断トツ1位になるだろうと予測しています。
また、日本ではラウンドアップは家庭や公園、学校などで除草剤として多く使用されています。この場合、皮膚から有害物質が体内に入り込み、経口に比べて体への悪影響が大きくなる可能性があるとのことです。
ヨーロッパやアメリカでは、子どもを守るために母親たちがグリホサートにノーを突き付けている一方、日本ではまだまだ危機感を共有できる仲間が少ないのが現状です。それでも、明るい動きもあることを知りました。名古屋市では公共施設での除草剤の使用を原則禁止しているほか、福岡県宇美市では行政においてグリホサートを使用していません。また、ダイソーは、グリホサート使用除草剤の販売中止を決定したそうです。
大切な子どもたちを守るために、私たちには何ができるのでしょう。
印鑰さんの勉強会に参加した後、私は友人に呼び掛けて、小さな勉強会を主催し、自分が印鑰さんから学んだことを共有し、私たちができることについて話し合いました。
そこで出た意見として、
・毎日の食卓に和食のメニューを増やす。
・スーパーでの買い物の際、できるだけ有機のものを選ぶ。
・地元のスーパーに有機の食品がなければ、置いてもらうようにリクエストする。
・地域の学校給食委員会に、米飯を増やしてもらうよう要請する。
・子どもの通う学校がラウンドアップを使用していたら、中止するよう求める。
などがありました。
どれも、毎日の生活の中で少し努力すればできそうなものばかりです。
また、一人の友人は小学校にかけあい、給食がパンやパスタなどの小麦製品の日には、自宅からお手製のおにぎりを持たせることにしてもらいました。
こういった動きを、もっと広げ、もっと加速させていきたいものだと感じました。